暗黒時代の終焉

ここ20年間は、日本のバイク業界にとって暗黒時代だった。

1980年代のバイクブームの終焉に始まり、バブルの崩壊。
1990年代後半に本格化した排ガス規制の影響で、スポーツバイクからスクーターまで、軒並みパワーダウンを強いられた。
途中、スカチューンやビックスクーターのブームはあったものの、バイクというよりはファッション的な、一過性の流行に留まった。
そして、バブルの傷が癒え始めたタイミングでのリーマンショック
実はスズキのAddressV125というスクーターの大ヒットもあったりしたのだが、お父さんの通勤快速として、力強いものの、極めて静かに燃える炎のようなブームであり、業界全体を盛り上げる類のムーブメントではなかった。

海外向けの大型車を除いて、国内ラインナップは絶望的な状況。
無難で、使い回しの、過去の栄光にすがるような、要は誰も欲しがらないようなゴミしか残らなかった。
この悪循環は、誰にも止められないように思えたが、意外な所から断ち切られることになる。

溶接大好き川崎重工、そうKawasakiだ。

絶望的な中型車市場に突如差し込まれたその光は、Ninja250R。
カワサキNinja250Rメンテナンス&カスタム

軽量コンパクトでありながら、小粋なフルカウルにパラレルツインという、公道スポーツとして極めて妥当なパッケージング。
あの輝かしい時代ならば、誰も見向きもしないような、古き良き普通。

ライバルたちが軒並み古臭い設計のまま先細っていた状況が幸いして、Ninja250Rは実際よりも輝いて見えた。
とは言え、世界的に大ヒットを飛ばし、日本国内だけでなく、世界中が新しい中型スポーツ車を待ち望んでいたことを売り上げで証明したのだから大したものだ。
80年代の熱狂からとっくに冷め、待ちわびていたユーザーたちの「これでいいのだ」という声が聞こえてくるようだ。

この勢いでKawasakiはNinjaブランドを再確立し、ラインナップを拡充した。
ちなみに調子が出てくるとカタログの"Ninja"率が上がるのはKawasakiの悪い癖だが、今回の功績を考えれば可愛いものだ。

Kawasakiの成功にいち早く乗っかろうとしたのが世界のHONDAだ。

Ninja250Rに真っ向勝負を挑むべく、完全新設計のシングルスポーツ、CBR250Rをリリースした。
ホンダCBR250Rファイル

非力な250ccを極限までパワフルに演出するためのシングル。
回転数は技術で補うというアプローチもHONDAらしい。
そしてこちらも、ブランド力を存分に発揮して、十分にヒットと言えるセールスを記録した。

そして、2013年冬、満を持して"あいつ"が発表された。


建前上、参考出品の体でR25と名乗ってはいるが、細部のパーツ選択からは、市販化を意識していることがビンビン伝わってくる。
海外では定番の人気車であるYZF-R125の実績があって、ウィンカーまで付けているのだから、YZF-R25の発表は時間の問題だ。

国内市場が余りにも縮んでしまったため、この力強い流れの変化に気付いている人は少ない。
しかし、もうメーカーと欧米は動き始めた。
そう遠くない将来、国内にも実感できるほどの変化が訪れるのは間違いない。
暗黒時代の雲はすでに去っている。

バイク小説短編集「Rider's Story」〜僕は、オートバイを選んだ〜

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だから僕は新しい出会いと情景を求めてバイクで旅に出るのだ (FRM books)

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