正直を褒められた思い出

四十路近くなった今も、時々ふと思い出す幼少の記憶があります。
正直を褒めてくれたお姉さんのことです。

毎年正月には、親戚がみな実家に帰省して、新年を迎えるのが恒例でした。
子供たちにとっては、お正月といえばお年玉。
初売りの日にはポチ袋を握りしめて、少し離れた町へ連れて行ってもらうのが、何よりの楽しみでした。

小学校の低学年の頃だったと思います。
その年も例年通り、デパートで年に一度の贅沢を満喫していました。
一通り買い物を済ませ、残った小銭でお菓子を買いました。
その時、お釣りの金額が少し多いことに気がつきました。
レジのお姉さんが、50円玉と100円玉を取り違えたのが原因でした。

お釣りが多いよ

何の気なしにそう伝えるやいなや、お姉さんは「まあ!」と声を上げ、私の頭を強く撫でました。

ちょっと待ってて!

そう言い残して何処かへ行ってしまうお姉さん。
実際には数分間だったのだと思いますが、訳も分からずに待つ時間は、とても長く感じました。

しばらくしてお姉さんは、手にビニール袋を持って帰ってきました。
中にはお菓子が沢山入っていました。
その袋を私に手渡しながら、お姉さんは言いました。

正直に教えてくれてありがとう。
それはとっても偉いことなんよ。
はい、これご褒美。

何気ない一言で、計らずも大いに褒められてしまい、嬉しいというよりも恥ずかしいような気持ちでいっぱいでした。
でも、良いことができたんだ!という、誇らしい気持ちも確かにありました。

それから今日までの日々を振り返ってみると、正直と馬鹿正直、お人好しの違いに気づくまでに、随分と回り道したようにも思います。
それでもやはり、生きていく上で、正直であることの大切さを疑ったことはありません。

思い出に浸るだけでなく、今度は私が、次の世代に伝えていかなければならないと、気持ちを新たにできた気がしました。

なぜ正直者は得をするのか―「損」と「得」のジレンマ (幻冬舎新書)

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